死は、いつかは来るものではなく、いつでも来るものなの。

書評

江田智昭著「お寺の掲示板」より。広島・超覚寺の掲示板に書かれていた言葉。女優の樹木希林さんが残した言葉とのこと。これは仏教の「諸行無常」の教えに通じる言葉だ。お寺の掲示板には仏教の教えを万人に分かりやすい言葉で訴えるものが多い。本書ではその掲示板の写真を集めて、著者がコメントを添えている。

充実した人生を送るには、死を意識して生きると良いと言われる。しかし人間は、自分の経験したことのないことを想像するのは苦手だ。だから死んだことのない人間が死を意識するのは難しい。

一方で、死にそうな経験をした人や、身近な人を亡くした人など、死を強く意識する経験をした人がいる。そういう人は、「自分もいつか死ぬ。だから生きている時間を大切にしよう」と思う傾向が強いように感じる。楽天創業者の三木谷さんも、阪神・淡路大震災での身近な人の死をきっかけに、「いつか」ではなく「今」やることが大切なのだと強く感じ、起業を決意したと語っている。

逆にそんな経験のない人は、自分が寿命以外で死ぬことはないと思っている節がある。これだけ新型コロナ感染症が蔓延している中、花見に行っているような人はおそらく、自分が感染して死ぬことは無いと思っているに違いない。

大切なのは、死を恐れないことではなく、死を身近に感じつつ、今を精一杯生きることだと思う。

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