三谷宏治著「戦略読書」より。ボストンコンサルティングという有名な経営コンサルティング会社が開発した企業分析ツールに、プロダクト・ポートフォリオ・マトリクス(PPM)というのがある。PPMは、横軸を企業の相対的市場シェア、縦軸を市場成長率として、自社事業を4象限に分けて分析するツールである。
著者はこのPPMをベースに、読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM)というのを提案している。これは、横軸をビジネス系・非ビジネス系とし、縦軸を基礎・応用として4象限をつくり、自分が1年間に読む本のうち、それぞれの象限に該当する本のバランスを戦略的に調整するというものだ。
著者が戦略的に読書をする必要があると思ったきっかけは、早く一人前になりたいと思って専門書ばかり読んでいたら、同僚と同じ思考になってしまったことに危機感を感じたからだそうだ。自分のビジネスと直接関係のない本をバランスよく混ぜることで、人とは違う発想ができるようになるのでは、という仮説のもと、RPMを使った戦略読書の手法にたどり着いたとのことだ。
言われてみれば大学のころは、大学の教科書や論文だけでなく、歴史小説や古典文学などをよく読んでいた。社会人になってからは、少しでも早く仕事ができるようになりたくて、少ない時間を捻出して専門書ばかり読んでいたら、専門と関係のない小説などは、ほとんど読まなくなってしまった。そのような読書週間により、私の発想も無意識のうちに、専門分野の常識に縛られたものになってしまっているのかもしれない。
北京に赴任していたころ、中国のことをよく知っておこうと思い、中国に関する歴史、地理、政治、経済などあらゆる分野の本を読んだ。中国各地に出張するときも、事前にその土地の観光地や歴史、食文化などを本やインターネットで調べ、休暇を取って博物館などを観て回った。このような経験を通じ、中国というものを立体的に捉えることが出来るようになったと感じている。
仕事の専門分野で人と違う成果を出すには、人と違う本を読むのも良いかもしれない。