天は富貴を人に与えず、これをその人の働きに与うるものなり

書評

福沢諭吉著、岬龍一郎訳「学問のすすめ」より。本書は、冒頭の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」というフレーズが有名なため、平等主義を説いた本だと思っている人が多いが、全く違う。

本書は、「確かに人は生まれたときはみな平等だが、その後どうなるかは学問ができるかによって決まりますよ、だから皆さん学問に励んで、しっかり成果を出して、豊かになりましょうね」ということを分かりやすく説いたものだ。だから本書のタイトルは、「学問のすすめ」となっている。

じゃあどんな学問に取り組むべきか。それは、「読み・書き・そろばん」だという。つまり、ビジネスに役立つ学問を勉強しましょうと言う。とても実践的だ。

大学を卒業し社会人になってから、この三つの学問は本当に大切だと実感する。読む力、すなわち読解力は、マニュアルや論文などを読んで、業務に必要なスキルを身に着けるのに役立つ。書く力は、上司に分かりやすい報告書を書いたり、メールで他人に仕事の内容を分かりやすく伝えるのに役立つ。そろばん、すなわち数字を読み解く力は、会社の事業成績を分析したり、自分の資産を運用するのに役立つ。

学校も、そういう将来の活用を意識した教え方をすれば、学生の学習意欲はもっと高まるんじゃないかと思う。将来なんの役に立つのかよくわからないから、「なんで勉強しなくちゃいけないの」という気持ちになる。

自分の子供にだけでも、学問の目的をしっかりと伝えたい。