雲南の地方病であったペストは、香港や満州に拡大し、世界中に広がった

書評

飯島渉著「感染症の中国史」より。19世紀末のペストの世界的大流行についての記載における一文。

歴史は繰り返す。本書を読むと、ペストの感染の広がり方と、今回の新型コロナの感染の広がり方との共通点に驚く。論語には、温故知新という言葉がある。また、ビスマルクは「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」と言っている。賢者は、自分で経験していなくても、歴史は繰り返すことを知っているから、歴史を学ぶことで、将来起こるであろう災いを回避することができる、という意味だと理解している。

自分の経験していないことを実践に活かすのは難しい。本を読んだり人から聞いただけでは、いまいち現実味が無い。この現実味が無い想像上の将来リスクと、現在の社会的立場や経済活動状況を天秤にかけ、現在享受しているものを捨ててでも、将来リスクを回避するための決断ができるか、と言われると、なかなか難しい。決断をしなければ、生命の危険があるとわかっていても、現実味が無いために、もしかしたら自分だけは大丈夫なのでは、と考えてしまう。

賢者とは、想像力がとても豊かな人なのかも知れない。

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