アルバート=ラズロ・パラバシ著、江口泰子訳「ザ・フォーミュラ」より。本書は、社会的な成功を得るための不変的法則を科学的なアプローチで解き明かそうとするものである。
例えば画家の成功とは、その画家の絵が高額で売れることだろう。では、全く無名の画家の絵を見て、その価値の評価をできる人がいるだろうか。どんな絵が好きかなんてとても主観的なものだし、その絵にどれくらいのお金を払って手に入れたいかなんて、人によって様々だろう。では絵の価値はどうやって決まるのか。
絵の価値は通常、キュレータ、ギャラリーのオーナー、オークション会社、収集家などのネットワーク、すなわち「絵の価値を決めている集団」によって決まる。だから画家が成功するためには、この「絵の価値を決めている集団」に自分の作品を知ってもらう必要がある。そして自分の作品がその集団で認められ、高額で取引されるようになれば、その画家は成功したと言える。
これは、サラリーマンの成功である昇格も同じだ。誰を昇格させるかは、組織のある一部の上司集団が決めている。昇格するためには、この上司集団に自分の存在を知ってもらい、成果をアピールする必要がある。逆に、どんなに成果を出しても、この上司集団の目に留まらなければ、昇格する可能性は低い。開発職や営業職など、成果が目に見えやすい業種ならまだしも、コーポレート職などグループでの成果が評価されるような業種であればなおさらだ。派閥、学閥、飲みニケーション、タバコ部屋での雑談が重要だと言われるのは、そういう理由だ。
だから会社で昇格したいなら、仕事で成果を出すだけでなく、上司とのコミュニケーションにも力を入れたほうが良い。また、上司集団が多く出席するプレゼンには、積極的に手を挙げて発表したほうが良い。
「俺の方があいつより絶対優秀なのに、なんであいつばっかり昇格するんだ」と思っている人は、上司集団にアピールすることを意識してみてはどうだろう。
ゲームに勝つには、ゲームのルールをよく知っておく必要がある。