在宅勤務の向こう側

生活

いまや世界中に蔓延している新型コロナウイルス感染症の影響により、私も二カ月近く在宅勤務を続けている。政府は緊急事態宣言を出し、なんとか事態を収束させようとしているが、こんなぬるい、各人の良心に任せた規制では、あと数カ月は在宅勤務が続くだろう。

過去、ペストやスペイン風邪が世界的に大流行したとき、人類はその流行を何とか食い止めようと、様々な対応をしてきた。この結果、医療が進歩したり、政治的体制が変化したり、保健衛生レベルが向上したりしてきた。今回も新型コロナの影響で在宅勤務が長期化すれば、それに対応できないものは衰退し、対応できるもののみが生き残っていくことで、社会の在り方が大きく変わる可能性がある。人との接触機会を極力減らした社会がどのようになるか、考えてみたい。あくまで私の想像だ。

経済について。個人のメリットは、通勤時間が無くなるので、他のことに使える、通勤による身体への負担が無くなる、毎日着る服を考えなくて良いので、洋服への投資やクリーニング代、洗濯の負担が低減する、人に会う機会が減るので、対人関係のストレスが減る、など。個人のデメリットは、通勤が無くなるので、意識的な運動や食事が必要になる、上司や部下と会う機会の減少により、マネジメントリスクが増える、など。

企業のメリットは、事務所確保が不要になるので、不動産投資、事務所光熱費、事務機器などの設備投資、従業員への通勤手当を削減できる。企業のデメリットは、従業員の在宅勤務を可能にするため、従来紙で処理していた書類の電子化のための設備投資費が増える。

企業には事務所という実体が無くなり、ビジョンやミッションという思想だけが残る。事務所に従業員を在席させておく必要が無いので、組織という概念が無くなる。個人は自分の住みたい場所に住むことができるようになり、都心の人口集中や渋滞が解消する。企業は業務を遂行するために必要な人材をその都度集めれば良くなり、企業の要求と個人のスキルをマッチングするサービスが充実する。個人は一企業の従業員という概念が無くなるので、複数の企業による従業員のシェアリングが進む。複数の企業からの収入が得られれば、個人のリスク分散になる。企業も従業員への福利厚生や退職金などを削減できる。

政治について。集団感染を避けるためネット投票の環境整備が進めば、わざわざ投票場所へ行く必要が無くなるので、投票率が上がる。投票率が上がると浮動票の影響が大きくなり、企業の組合や農協などの団体の支持しない政治家が当選することとなり、より民意を反映した政治家が増えれば、国の政策もより民意を反映したものになる。ネットを活用した国民の意見を聞く仕組みが充実し、民意がダイレクトに国の政策に反映されやすくなる。

金融について。現金やクレジットカードでの精算時における接触感染を避けるため、非接触で精算できる電子マネーの普及が進む。お金のやり取りにおける抵抗感が小さくなり、お金の流動性が高まる。現金を持ち歩く必要が無いので、スリなどの犯罪が減る。銀行の窓口業務や、ATM、CDなどの取引端末が不要になる。

行政手続きについて。集団感染を避けるため、役所への書類申請や税務署への納税書類の提出が全て電子化される。役所における窓口業務は自動化され、24時間365日、自宅から手続きが可能になる。

消費について。食料品の買い物や食事のデリバリーは全てネットで予約できるようになる。食料品や食事の配達専門の業者が生まれ、どのレストランの食事も自宅にデリバリーできるようになる。商品受け渡し時に電子マネーで費用精算され、一部が配達料として配達専門業者に、残りがレストランに電子マネーで送金される。

医療について。自分の受付番号と現在診察中の受付番号が定期的にスマホに送信され、病院の待合室で長時間待つ必要が無くなる。治療後、治療費はは電子マネーでネットで精算し、処方箋は自宅最寄りの薬局に電子送信される。薬局で薬の準備ができたらスマホに通知が来るので、都合の良い時間を返信し、その時間に薬局に薬を取りに行く。

人人感染を防止するには人との接触時間を極力さける必要がある。それを突き詰めることは、人の移動を減らし、生産性を上げることにつながる。

仕事ができないと嘆いてばかりいては、この大きな変化に追従できず、淘汰される。社会が今後どのように変化していくかを予測し、その変化に追従していく力をしっかり磨いていきたい。